破損した大谷石の修復。修復跡が全く分からない特殊な工法とは!

大谷石の修復

大谷石の塀や門柱、オブジェなどが交通事故で損傷し復旧工事の依頼をいただくことがあります。損傷した部分を新しい大谷石と交換したり積み直したりが基本となりますが、軽く擦れたような小さい傷がついだだけな場合もあります。

しかし、小さな傷といっても、石塀の最下段に傷がついてしまった場合は、最下段の石を外すためにその周りの石を全て外す必要が出てきますし、門柱の場合も左右一対がセットですから両方交換したいといった要望が出てきます。また大谷石の役物(規格サイズより大きい特注大谷石)で作られたオブジェは、石を用意することも大変ですし加工も簡単にはできません。全て新しいものと交換したいけど、予算の都合で難しい場合もあります。

そういったときに傷の部分だけ綺麗に修復できればすごく助かりますよね。今回は一部破損した大谷石のオブジェを修復した事例をご紹介いたします。

破損した大谷石オブジェ

大谷石オブジェ破損大谷石の産地、宇都宮市では写真のような大谷石のオブジェが結構あります。このオブジェに使用されている大谷石は、通常採掘される大谷石の規格サイズより大きく、役物と呼ばれる特注サイズです。このオブジェの笠木部分が交通事故で破損してしまいました。

破損した笠木部分のみを修復

大谷石オブジェの破損破損した部分の石全てを新品と交換すると、そこだけ色が変わってしまいます。笠木とセットになっている半球部分の加工も必要となり結構な制作費になります。そこで破損した部分に新しく用意した石をはめ込み、古石の質感を再現することになりました。

修復後の大谷石オブジェ

大谷石の修復写真は修復後の大谷石オブジェです。どこが破損していたのか全然分からないですよね。修復したことを知っている人は注意深く見れば分かるかもしれませんが、知らない人が見たらまず気が付かないと思います。それでは順を追って修復作業をお見せ致します。

加工した笠木をダボでオブジェと結合

あらかじめ寸法を測り制作しておいたオブジェの笠木です。笠木が破損箇所にぴったりはまるようにオブジェ、笠木両方を削っていきます。

大谷石の笠木 大谷石の修復 大谷石加工

何度も仮合わせをして、綺麗に納まりそうになったら、ダボをはめ込んで石材用の接着剤で接着します。

ダボ 接着剤 大谷石の修復 大谷石の修復

通常であればこれで復旧作業は完了ですが、大谷石の新材と旧材で色が全然違います。

絵具で修復部分をオブジェと一体化させる

大谷石の修復大谷石の修復大谷石の修復

排気ガスや酸性雨で黒くなってしまった大谷石のオブジェと同じ風合いになるように、修復した笠木部分を絵具でペタペタと塗っていきます。塗り方のコツや注意点は紹介することはできませんが、ほとんど違和感ない程度に仕上がるのが分かりますと思います。

絵具は屋外で使用できる耐水性・対候性に優れたものを使用します。
大谷石の修復大谷石の修復

まとめ

今回は大谷石オブジェの復旧作業をご紹介しましたが、石塀や門柱でえぐれてしまったような傷でも、損傷部分が剥がれないように肉盛し、同じ表面仕上げを再現し色を同化させることで修復が可能です。貼り石のクラック跡も同じように隠すことができます。小さな傷を修復するために大掛かりな工事になってしまうシーンで活躍できる工法です。

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2017.01.12